1998年12月 作成
インターマークの特長のひとつであるTN法の利用方法について、特許庁公開データの称呼データの作られ方、そしてこれを想定したTN法のより効果的な使い方や注意事項について説明したものです。皆様のお役にたてて頂ければ幸いです。
インターマークのTN値は0から79の範囲です。
値が高くなるに従って同一から次第に離れて行き、否類似の領域に近づいて行きます。
0は二つの称呼が同一(ズバリ)という事を意味します。
TN値はT表(商標の類否審決の事例を基に考案された表)から求められるT値と、二つの称呼の長さから決まるN値の和(T+N)です。
T表は131*131の音のマトリックスで、任意の音と音に対して値(t)が与えられています。
例えば「ア」と「エ」の値は45、「キャ」と「カ」の値は37などです。
この値は二つの音の否類似の程度を表す値で、基本的な傾向として良く似た音同士は低い値、似ていない音同士は高い値が与えられています。
T値は、まず二つの称呼を比較し相違する音と音の組みについてT表から値(t)を求めます。
相違する音が複数組みある場合には t の総和がT値です。
例外的に連続した2音の入替えの場合は特別にT値=38となります。
N値は二つの称呼の長い方の音数が5音の時が0で、
1音長くなるに毎にプラス10、1音短くなる毎にマイナス10します。
つまり長い方の音数をnとするとN=10(5−n)によって計算されます。
いくつかの例でTN値の計算方法をご確認下さい。
例 |
説 明 |
TN値 |
「モネース」と「モニース」 | 二つの称呼を比較して、「ネ」と「ニ」が異なりますので「ネ」と「ニ」の t は31、ほかに異なる音はないのでT値は31です。
二つの称呼の音数はいずれも4音なので、N値=10(5—4)=10です。 |
31+10=41 |
「ベイスターズ」と「バイオスターズ」 | 「ベ」と「バ」の t は33、「オ」の有無のtは48、したがってT値=33+48=81です。
長い方の「バイオスターズ」は7音なのでN値=−20です。 |
81−20=61 |
「マックス」と「マック」 | 「ス」の有無の t は22でT値=22です。長い方の「マックス」は4音なのでN値=10です。 | 22+10=32 |
「インターマーク」と「インターモール」 | 「マ」と「モ」の t は32、「ク」と「ル」のtは34、したがってT値=32+34=66です。
二つの称呼はいずれも7音なのでN値=−20です。 |
66−20=46 |
TN法では49までが類似の可能性が高いと言われています。
インターマークでは、TN値49までが検索され、あとは10刻みに79までが次々に検索されます。
TN値は称呼の類似否類似を統計的な確率で表わした値ですので、ある点以下は類似、 ある点以上は否類似というようにきちっと割り切れるものではありません。
何度かTN法による検索を試される事により「何点まで検索すれば安心か」といった 感覚を養っていただきたいと思います。
ズバリ、1音違い、2音違いのすべての称呼が検索できます。
音の違う位置や挿入削除の位置に制約はありません。
入力称呼が「インターマーク」の場合、検索可能な類似称呼の範囲と具体例は次の通りです。
ズバリ | インターマーク |
1音違い | インターマック |
1音削除 | インタマーク |
1音挿入 | インターマークス |
1音違い1音挿入 | インタードマック |
1音違い1音削除 | インタマート |
1音挿入1音削除 | ザインタマーク |
2音違い | インテルマーク |
2音挿入 | インターナルマーク |
インタードマークス | |
2音削除 | ターマーク |
インタマー | |
前後音交換 | インータマーク |
短い称呼の場合は1音違いでもすぐにTN値が高くなる傾向があります
この場合検索時間が通常より長くかかります。
称呼が長くなるにつれて、「2.TN法で検索できる類似称呼の範囲」で説明した
類似称呼の範囲にある組み合わせの数が急に多くなる為です。
長い称呼は検索時間が通常より長くかかります
特に類似群コードの数が多い場合と重なるとこの傾向が顕著です。
全類指定の場合は比較的速く検索できます。
漢字商標の場合、気を付けていただきたいのは、読み方が複数ある場合です。
例えば「上野」は「ウエノ」と読みますが、「コウズケ」とも読みます。
特許庁称呼は必ずしも全ての読み方を登録してはいません。
「上野」の場合「ウエノ」と「コウズケ」の両方読んでいる場合と、代表的な読み方の片方だけの場合があります。
この場合は「ウエノ」が代表的な読み方のようですが、何を持って代表的とするのか、決められたルールはありません。
読み方が複数考えられる場合
代表的な読み方に100%の自信がない場合は複数の読み方についての検索をお勧めします。
また「日本橋」の「ニホンバシ」と「ニッポンバシ」のような場合はTN値に差がでるにすぎず、二通りの検索は不要と思われます。
語句が結合した商標の検索では、特許庁の称呼データの作成の仕方について知っておく必要があります。
「アアア」と「イイイ」が結合した商標の場合、称呼は「アアアイイイ」、「アアア」、「イイイ」の3とおりが考えられます。
しかし特許庁称呼には3とおり全てが登録されているとは限りません。
具体的な例を上げてみますと、以下のようになります。
商標 |
特許庁称呼 |
杜仲茶 | トチュウチャ、トチュウ |
Inter Mark | インターマーク、インター |
Software.com | ソフトウェアコム |
スーパーマン | スーパーマン |
たぬきの@フーちゃん | タヌキノフーチャン、フーチャン、フー、タヌキノフー |
タヌキトーク | タヌキトーク |
以上のように、特許庁称呼は基本的に一連称呼と識別力のある部分が登録されていると考えられます。
逆の言い方をすれば、「特許庁が識別力がないと判断した語句は称呼データに登録されていない」と考えるのが自然です。
「タヌキトーク」の場合、「トーク」で検索しても決して「タヌキトーク」は検索されません。
TN値以前にすでに3音違いだからです。 この場合はシリーズ検索が適しています。
「トーク」を含む称呼(「トーク」と結合した商標)が全て検索されます。
複数の語句が結合した商標を検索する場合
まず、一連の称呼で検索し、それぞれの語句が識別力を有すると思われる場合はその語句も検索します。
識別力のない語句と結合した商標を検索される場合にはシリーズ検索をお勧めします。
それぞれの語句がいずれも識別力が有る場合には、結合称呼指定(称呼を入力する時に語句と語句を空白で分けて入力する方法)をお勧めします。
注) 識別力の有無の判断は商品や役務の違いによって異なりますので 商標調査を経験された方の意見を参考にされると良いと思います。
外国語商標の称呼は、多くの場合、その母国語で読まれています。
しかし日本でその母国語読みに馴染みが無く、普通の日本人が英語や
ローマ字で読む読み方(日本的読み)が一般的な場合には日本的読みで登録されています。
また母国語読みを基本としながらも、日本的読みを付加登録している場合もあります。
外国語商標を検索される場合には、母国語読みと日本的読みの内、 日本で一般的な読み方と思われる方を入力して下さい。
この判断は年々変化もするし、主観にも左右されますので、判断に迷われる時には複数の読み方での検索をお勧めします。
外国語商標の称呼データの具体例を上げますので参考にして見てください。
母国語読みを基本としている例 | |
GOURMET | グルメ |
HaagenDazs | ハーゲンダッツ |
Sydney | シドニー |
日本的読みを基本としている例 | |
PopEye | ポパイ |
tomato | トマト |
母国語読みに日本的読みを付加している例 * | |
PETIT | プチ、ペチット |
PRINTEMPS | プランタン、プリンテンプス |
PARIS | パリ、パリス |
Volkswagen | フォルクスワーゲン、ボルクスワーゲン |
漢字やアルファベット等からなる商標で、 長音を含む読みが可能なものは、多くの場合長音記号を用いて称呼が作成されています。 |
東京 | トーキョー | |
Inter Mark | インターマーク | ||
アルファベットを1字づつ読む場合には長音記号を用いないのを基本としています。 | CDI | シイデイアイ |
ユーザマニュアルの関連資料にも記載されていますが、アルファベットの代表的な読み方はつぎのとおりです。
A:エイ | B:ビイ | C:シイ | D:デイ | E:イイ |
F:エフ | G:ジイ | H:エイチ、エッチ | I:アイ | J:ジェイ |
K:ケイ | L:エル | M:エム | N:エヌ | O:オオ |
P:ピイ | Q:キュウ | R:アアル | S:エス | T:テイ |
U:ユウ | V:ブイ | W:ダブリュウ、ダブリュ | X:エックス | Y:ワイ |
Z:ゼット |
以上が特許庁称呼の作成の考え方ですが、まれに違った読み方のものがありますのでご注意下さい。
しかし違った読み方のものも特許庁称呼の作成の考え方にそった称呼を入力すれば、 TN値を49点以上に検索の範囲を広げることによって検索可能となります。
インターマークでは3音以上異なる称呼は検索の対象外となっています。
3音違いで類似度の高い可能性のあるケースは拗音を含む称呼にとくに起こり得ます。
例えば「ウインタ」と「ウィンター」の場合がそうです。
拗音を含む「ウィ」は1音で拗音を成音にした「ウイ」は2音となり音数に1音の差が生じるからです。
この場合「ウ」と「ウィ」の差、「イ」の有無、「ー」の有無で3音違いとなります。
このように3音違いで類似の可能性が予想される場合には2回の検索をお勧めいたします。
こうした拗音の特異な事情を少しでも改善するために、インターマークでは次のような拗音の特別処理を行っています。
入力称呼に拗音が含まれる場合には、TN法による検索に加えて、すべての拗音を成音に置き換えた称呼と同一の称呼の検索を行っています。
入力称呼が「ウィンタ」の場合は「ウィンタ」のTN法による検索とは別に「ウインタ」の同一称呼の検索も合わせて行います。
これらの商標に関して注意すべき事は「全ての商標について称呼データが作成されている訳ではない」という事です。
図形に関しては称呼データは作成されていないと考えるのが妥当です。
ただし容易に観念が生ずる図形については称呼データが作成されています。
例えば「虎の絵」や「猫の絵」の商標の場合は「トラ」や「ネコ」と、観念どおりの称呼データを作成してあります。
また、 商標として旧来からよく使われる記号(マル、ヤマ、カネ、ウロコ、ヒシ、キッコウ、カク、カゴメ、フンドウ、イゲタ、フク、イズミ、ジガミ、…)はこのように称呼データを作成してあります。
記号と文字が結合している場合にも慣習どおりに称呼データが作成されています。
英字やカナ等の頭文字を組み合わせて図案化したモノグラムの場合は称呼データ作成の原則がはっきりしていません。
特に問題となるのが、1字〜3字の英字が図案化された場合です。
英字の部分の称呼データが作成されていればTN法での検索は可能ですが、称呼データが作成されていなければTN法での検索はできません。
例えば「J」と「R」が組み合わさって図案化されている「JR」のように「ジェイアアル」と称呼データが作成されている場合もあれば、同じような形態でありながら称呼データが作成されていない場合もあります。